『AIの遺電子』ネタバレ感想&アニメ魅力|ヒト×ヒューマノイドとバックアップ
ヒトとAIが共存する世界
アニメ『AIの遺電子』面白いですね。ヒトとAI(ヒューマノイド)が共存する世界を描いたSFアニメです。
深いテーマにドキッとせずにはいられない。
この世界ではヒューマノイドも人権を持っていて、ヒトと区別がつかない(もはや、する必要がない)んです。ある意味、理想的な世界だけど、様々な問題があって深いな・・・と感じました。
便利になった反面、様々な悩みが丁寧に描かれていて感情が揺さぶられた。第1話「バックアップ」のレビューだよ。
『AIの遺電子』あらすじ&作品情報
ヒト×ヒューマノイド
これは、私たちの未来の物語―。21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を人類に突きつけた。そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。須堂光はヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく。時に、裏の顔も使いながら・・・。
『AIの遺電子』#1「バックアップ」ネタバレ感想|自分をカタチ作っているものは過去
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
アニメ『AIの遺電子』第1話「バックアップ」を見て考えをめぐらせたのは、自分をカタチ作っているものについてでした。
自分をカタチ作っているもの→過去の自分
例えば、今まで感じてきた思いや、考え、経験などです。それらが合わさって、私という個人になっている。
その過去がなくなる(リセットされる)としたら、リセット前と後の自分は同じ自分といえるのか。
第1話は、そんな状況に陥るヒューマノイドと家族の物語だった。
ウィルス感染したヒューマノイドの母親
主人公、ヒューマノイド専門医である光が診察したのは、ウィルス感染したヒューマノイドでした。
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
あんたの奥さんはウィルスに感染してる。半月もすれば、ただの抜け殻になるさ
いきなりの余命宣告・・・。
どうやら、バックアップ(人格のコピー)をとった際にウィルス感染したようですね。AIだからバックアップをとることができちゃうんです。
でもこの世界ではバックアップはタブー、犯罪でした。取りたくなる気持ちはわからないでもないけど・・・。
後ろ暗いことをしている患者でも治そうとする光は、ブラックジャックみたい。
バックアップを使ったママは、今のママと同じ?
バックアップをとった母はリセットが可能です。コピーから一週間経ってるから、その分の記憶もリセットされるのだけど・・・。
リセットすれば、今の自分の記憶がなかったことになる。
それは、きっと怖いことですよね。巻き戻ったとしても自分なんだけど、今とは少しだけ違う自分です。
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
ヒューマノイドを母に持つ娘のことばに、心が震えました。
私にはわからない。バックアップを使えば、ママはこの先も私たちと一緒だ。でも、そのママは本当に今のママと一緒なの?
・・・ああ、『ニーア』でも感じたことだ。
アンドロイドたちが主人公のゲーム『NieR:Automata』、アニメ化もされました。
『NieR:Automata』は生と死を繰り返すアンドロイドたちが描かれています。バックアップをとって、何度も巻き戻って戦うシリアスなストーリー。
『AIの遺電子』も『NieR:Automata』も、バックアップという便利な(?)選択肢があるのだけど、何かモヤモヤするんだ。
何度も人生をやり直せる(この世界ではタブーだけど)とか、一見、魅力にも感じることが、本当にそうだろうか?・・・と。
過去には消したい記憶というものがあるけど、その経験を含めて今の僕だからね。
生クリーム入りのスクランブルエッグ|消えた半月分の記憶
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
ヒューマノイドの母は、ウィルス感染したまま残りの人生を過ごすことにしました。
今、私が私だと思っているものは、ここで消えてしまう。そう感じるの。怖い、私、怖い
停止するまでは今のままでいたいとの思いが強かったのです。・・・でもその気持ちはわかる気がしました。やっぱり怖いですよね。
一度フォーマットしてからバックアップを入れ直す。今の自分が消えるのもだけど、失敗したら・・・とか考えちゃうよ。
ウィルス感染したまま半月を生きた母。機能停止した後にバックアップで復活するのだけど、最後は切なさが増しました。
生クリーム入れた?
生クリーム入りのスクランブルエッグです。それを娘のために作ったのは、バックアップをとった後。生クリームを入れたことも、娘が喜んでくれたことも覚えていません。
娘から涙があふれました。でも母は、なぜ娘が泣いているのかわからないんです。それがたまらなく切ない・・・。
前と今のママは違うと悟った瞬間。娘にとっては大切な思い出だけど、大好きな母と共有できないなんて悲しくなった。
『AIの遺電子』アニメみどころ|毎回、考えたくなるような深いテーマが面白い!
- ヒトとヒューマノイドが抱える「新たな病」
- 毎回、考えたくなるような深いテーマが描かれる
『AIの遺電子』はヒトとヒューマノイドの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく物語です。これがなかなか深くて、心にグサッとくるんですよね。
原作コミックも数冊、読んだよ。主人公の光が一話ずつ「新たな病」に向き合っていく連作短編ストーリーで読みやすかった。
様々な悩みが描かれていて切なくもなるけど、AIとの共存は、ぜひ実現してほしい未来です。
第一話のはじめに描かれていた「インプラント」については、野崎まどさんの小説『know』を連想しました。
脳に「インプラント」を構成して、機械なしでもチャットやゲームができちゃう。ひょっとしたら、こんな未来になるときがあるのかなと、夢がふくらみました。
テクノロジーもヒトの想像力もすごいや。